季節を食す



春は苦味
春は、冬に滞った血の巡りをよくするために
苦みを摂る季節です。
なので
山菜のような苦い草が生えてきます。
いつの季節が良いですか?
と良く聞かれます。
その時その時の良さがあると思ってますが、
雪国の者としては
長い冬が終わり
雪解けと共に訪れる春の緑には心が躍ります。
- 行者にんにく
- 蕗のとう
- コジャク
- カタクリ
- アズキナ
背の低い山菜の後は
タラの芽などの木の芽が始まり
ウド
アザミ
ハンゴンソウ
ヨブスマソウといった
背の高い山菜が出てきます。
ここからが山の真骨頂の見せどころです。
挨拶しても無視された山菜おじさんに
おまえ何採ってるんだと言われた時、勝ったと思いました。
朝食の山菜の盛り合わせは是非味わって頂きたい。
この時期の主菜はアスパラです。
本来苦さと青さを感じる野菜であるアスパラも
技術の高さに甘さを強く感じます。
そこに春の苦味を添えて
食べた後は毛穴から香るほどにアスパラ責めです。
- ホワイト
- グリーン
- 路地
- ハウス
- 太さ違いに
- 品種違い
多年草であるアスパラは
北海道の雪の下で完全に休眠する事で
春からの様々な要素に恩恵をもたらします。
生産者の技術力の高さに
アスパラは三日目の方が水気が抜けて味わいは濃く感じます。
なので本州で取り寄せたくらいの方がむしろ味は濃く感じます。
それでも毎日取りに行くのは
その瑞々しさと香りを伝えたいからです。
上顎の皮がめくれる程に吹き出る水分とその香りから
産地である事を感じてほしい。
味わいのバランスとしては中間くらいの
ホワイトなら3エル
グリーンならエルから2エルくらいが一番バランスは良いですが
噛んだ時の水分の出方は圧倒的に太い方が良いのと
いやらしい話、
太い方が見るからにインパクトがあるので
あえて太い方を選択してます。
また
普通は太いと味がないのですが
うちの生産者は
『太くてもちゃんと美味しい』
ここが彼の技術の高さなのです。
余市SAGRA的推しの季節です。
夏は酢の物
夏は暑さで食欲が落ちるので酸っぱいものを摂って
食欲を増す季節です。
なので
スイバ、カタバミ、スベリヒユのような
酸っぱい草が生えてきます。
アスパラが終わるとトマトが始まります。
暑くなる前と
寒くなる時が美味しさのピークです。
また定置網の漁も始まり
魚の状態と種類が一変します。
五月二十日頃から余市
六月十五日頃から積丹のウニが始まります。
積丹が始まると
余市SAGRAは春メニューから夏メニューへと変わります。
ウニは
ランチは一品、ディナーは三品、
朝食では水揚げされる港ごとの味比べ。
七月からは近郊の川で鮎が始まります。
余市川も昔は釣りの大会が開かれるほど鮎の聖地でしたが
山の開発と共にその様子は一変しました。
なので意地でも出してます。
八月一杯でウニが終わると
余市SAGRAも秋メニューへと変わります。
悔しいですがお客様の反応が一番いい季節です。
ウニを超えたいといつももがいています。
秋辛み
秋は、冬の寒さで毛穴が閉じるので、
滞るその前に汗をかき代謝を上げておく季節です。
なので
ニンニク、生姜、唐辛子が採れます。
ウニが終わるとキノコが主役になります。
ヤマドリタケ
ススケヤマドリタケ
ヤマドリタケモドキなど
ポルチーニと呼ばれるものから、
唯一生食できるタマゴタケ、
アカヤマドリタケ
キンチャヤマイグチ
ハナイグチ
シメジ
舞茸
香茸
ユキノシタナメコなど
様々なキノコが順にやってきます。
だんだん寒くなると虫も減り、ほっとします。
あまり虫が得意ではありません。
川には鮭がのぼり
命を燃やし世代を繋ぎ役目を終えます。
ブリからイナダ、そしてフクラギへと
だんだん小さいものが獲れてきて、またブリへと出世します。
エビカゴからタラ網へ、
そして間も無くジビエが始まります。
冬は油
冬は寒いので体温を上げる季節です。
なので
我々が食す動物も脂を蓄え
木の実も乾き
油を摂る環境が整っています。
葡萄収穫が終わると余市SAGRAも町内もお客さんが減りますが
冬支度にやることはそこそこにあります。
ゴボウ、紅芯大根、雪下の大根に
キャベツ、二月末には雪下のじゃがいもと
寒い地方だから得られる、
凍えることに耐えた作物の生命を感じてほしい。
収穫時期という旬と食性としての旬
これがまさに北海道の冬の強味です。
漬物を漬け、塩蔵する物、干す物、雪の下に埋める物など
収穫する物がないので
ここからは店と料理人としての技量が試される季節です。
物がないと知恵が生まれます。
料理人としての振り絞った知恵を是非体験して頂きたい。